4 ポゼッションサッカーに必要なもの

 ポゼッションサッカーを志向する方は多いでしょうが、実際プロクラブで試みると、なかなかうまくいかないものです。ポゼッションサッカーで必要なものについて、私見を書きます。

ざっとあげると、

  • ポゼッションが目的とならないこと
  • 複数の選択肢を持ち、それぞれの選択肢に優先順位をつけること
  • 判断のスピードをあげること

でしょうか。

1 ポゼッションが目的とならないこと

 ポゼッションは勝利のための手段であって、目的ではありません。この点を見失うとさんざん自陣でパス交換した後に、前線にお願いロングスルーパスを出すだけのサッカーになります。

 ポゼッションの狙いは、ボールを保持し相手の攻撃機会を奪いながら、相手の隙を伺って確実性の高い攻撃をすることにあります。この確実性が大事で、ボールを保持してシュートまで持ち込める機会が、毎回前線にロングスルーパスを出してシュートまで持ち込める機会よりも少ないのであれば、前者の後者に対する戦術としての優位性はないことになります。(極一部を単純化した比較です。)

 では確実性を高めるにはどうすればよいか。そこに2つ目、3つ目の要素が出てきます。


2 複数の選択肢を持ち、それぞれの選択肢に優先順位をつけること

以下は433でlsbが低い位置でボールを持った時の例です。

優先順位 プレー内容 その後の展開 成功率
1 stへ強ゴロパス
2 lwgへ強ゴロパス
3 ドリブルで運ぶ
4 lcmへパス
5 rcmへロブパス
6 rwgへサイドチェンジ
7 lcbへパス
8 gkへパス 極高
9 rsbへサイドチェンジ


優先順位はよりその後の展開が良い物を高くしています。試合の中での思考のプロセスとしては、

  1. 自身にパスが来るまでにstとlwgの位置を確認
  2. 自身のパスが通りそうならst又はlwgへパス
  3. 自身のパスが通りそうになければ、自身のマーカーとlcmの位置を確認
  4. 自身へのマークがタイトではなく、前方にスペースがあるならドリブルで運ぶ
  5. それも無理ならlcmにパス


…というように、優先順位の高いものから考え、その後の展開と成功率を秤にかけながら、望ましい選択肢を取ることになります。
 もし、ポゼッションを目的としてしまったなら、プレーの成功率を最優先し、ボールを前線まで運べないか、ずるずるとゴールキーパーまでボールを下げ、前線へ蹴り出すサッカーとなるでしょう。そうならないためには、自身のポジションにおけるそれぞれのプレーの選択肢とその優先順位を、きちんと整理しておくことが必要です。

3  判断のスピードをあげること

 2で記した内容で勘違いしないでいただきたいのは、ボールが回ってきたらできるだけキープして前線に送れ(前線であれば下げずに独力でシュートまでいけ)ということではない、ということです。先程のlsbの例でいえば、前にボールを送ることができるかは自身にボールが来るまでに判断しておかなければいけませんし、前にボールを送れないと判断したら、一旦その選択肢は捨て、速やかに味方にボールを渡す(可能なら前方にスペースがあり、前を向いた味方に)ことが必要です。
 速やかに、と書いたのは、ボールホルダーがパスを出せる範囲にいる味方に対しては、ボールホルダーが時間をかければかけるほど相手チームがタイトにマークにつく、ということが理由です。
 そして、できるだけ前方にスペースがあり、前を向いた味方にボールを渡すのは、プレーの選択肢が多いからです。パスを受けた味方は、ゴールに近付ける選択肢を持ちながらプレーすることができます。


例 gkからlcbがボールを受けた場合

lcbは相手ゴールに背を向けた状態です。lcbはゴールに向かうプレー、反転してlwgにロブパスを考えたとします。しかしlcbの背後に相手stが待ち構えており、反転するのは難しそうです。lcbは体をひねりながらlsbへ短いスルーパスを出しました。ボールを受けたlsbはダイレクトでlwgに強ゴロパスを出し、lwgがボールを受けることができました。